第8回国際運動器超音波学会 報告

亀田第一病院 渡辺研二

2006年9月21日から23日までポーランドのワルシャワで開催された。

日本からは名鉄病院の杉本勝正先生(現在、名古屋スポーツクリニック)と大阪医科大学、名誉教授小野村敏信先生と私が参加した。

初日の9月21日はオーストリアのGrafの、超音波で股関節スクリーニングをすることでコストも治療例も減ったという話とMarcelisの軟部組織に対する超音波診断の特別講演のあと、10時から肩のセッションから始まった。超音波ガイド下に石灰を穿刺吸引する方法、超音波ガイド下に石灰を関節鏡で摘出する方法などがあった。杉本先生はお得意の上方SLAPの超音波診断を発表し、かなりの反響があった。軟部組織の超音波診断では、背側から中手骨レベルの屈筋腱を観察する方法が述べられ、確かに掌側からでは指を屈曲した場合に観察ができないから面白い発想だと感心した。

昼飯後、Instructional courseが開かれ、肩、膝、股関節、軟部組織のコースに別れてセミナーが開かれた。私は膝のコースに参加した。膝は関節軟骨を観察したことはあったが、それ以上は病的診断に向かないと思っていたが、ジャンパーズニーや半月板の観察、内外側の靭帯の診断が行われた。さらにACL損傷では靭帯を視るのでなく、大腿骨付着部の靭帯の欠損を視ることで診断、そしてPCLもかなり観察できることがわかった。また、うまくすると腓骨神経も観察できることがわかった。

9月22日、演題の前に次回は2006年10月8-11日までトルコのアンタルヤでの開催が決まり、その挨拶が次会長から行われた。8時半から関節炎のセッションが始まった。RAのPannusのパワードップラーを使った超音波による客観的評価は実際の炎症を起こしている関節の評価には十分使えると感じた。また、関節炎でも痛風では軟骨表面にエコージェニックな層ができると言う発表があり、他の関節炎との違いが超音波で鑑別できるようだ。私の発表の先天股脱のセッションでは、大腿溝左右差と超音波上の異常例が相関するという発表ぐらいで目新しい物はなかった。スイスのDr.Dubsの超音波下石灰沈着性肩関節周囲炎の特別講演があった。石灰周囲に局麻注入し、約20後に針で砕き壊して吸引するという方法であった。

9月23日、8時から最後のセッションが始まった。まず、マケドニアのPoposka教授から超音波はRAや腱炎、Osgood-Schlatterにも有用で特にRAの関節のpannusの状態、滑膜の厚さ、血行の状態がわかり、これらから活動性の評価もできると報告があった。次にボローニャの先生から今年の日本での研究会でも発表された筋挫傷に対してエラストグラフィーが有用であるという演題があった。さらに脚延長時の超音波による評価の有用性の発表、ウクライナから超音波検査16年20,000例の経験と題しての発表で、腰椎および頸椎の前方からの椎間板ヘルニア診断があった。さらにドイツの先生からペルテス病の骨頭外側偏位の評価を超音波で行ったと言う発表もインパクトのある発表であった。その後、セミナーで私は小関節のコースに参加した。講師はイタリアのFodor先生、女性であったが、手関節から爪までと足関節であったが、解剖と超音波を組み合わせた、整形外科エコーセミナーに比べ数倍レベルの高いセミナーであった。そして、午後1時半とても内容のある充実した第8回国際運動器超音波学会は終了した。

写真1は小野村先生、会長Czubakと私

写真2はBeat Dubs (Switzerland), Lubos Hradzira (Czech Republik)夫妻, 小野村先生、私です。