第10回日本整形外科超音波研究会インターネット討論 演題4

整形外科領域における超音波画像の立体化の試み

大阪医科大学整形外科 瀬本喜啓、阿部宗昭

東芝メディカル関西サービス 田部正治


 この演題には、動画が付いています。各症例の静止画像をクリックすると動画を見ることができます。尚、QuickTime movieのインストールが必要です。

【目的】

 超音波断層画像から立体像への再構築はさまざまな分野で試みられているが、整形外科領域での発表は少ない。我々は1992年よりさまざまな方法で超音波画像の立体化を試みてきた。初期の頃はfree handで連続録画した約50枚の超音波画像を1枚ずつコンピューターに取込み、これに適度な厚みを与えて再構築し立体像を得るという方法であった。当時はすべて手動で行っていたため、1枚の画像を得るのに数時間の作業を要し、画像も満足のいくものではなかった。今回我々は、これらの操作をほぼ自動で行うことのできるTomTek System(図1)を用いて超音波断層像の立体画像化を試みた。

【方法】

 使用した超音波断層診断装置は東芝社製SSA250Aで、自動走査装置(図2)を装着した7.5MHzのアニュラ・アレイプロ−ブを用いた。まず検査部位にプローブを密着させ、約3秒間の自動走査を行い40〜50枚の断層像を得た。立体画像の再構築プログラムはTomTek Systemを使用した。このプログラムにより再構築された各検査部位の像が、立体画像として判別可能か否かを検討した。

【対象】

 正常例として、小児の膝関節6例、股関節3例、腰椎1例、および成人の手根管1例、肘関節1例、膝関節1例を対象とした。疾患例としては、DDH2関節、ガングリオン1例、arthrogryposisの股関節1例、肘部のbursitis1例、単純性股関節炎1例の計19部位を対象とした。

【結果】

 CTの立体化で用いられる体表から目的器官を透見する方法では、すべての例で判別可能な立体像は得られなかった。そこで目的器官の短軸または長軸で割面を作製し、割面の内面から観察した結果、立体像として判別出来たのは、小児膝関節2例、単純性股関節炎1例、DDH2関節、ガングリオン1例、bursitis1例であった。かろうじて判別可能なものは、小児股関節3例、小児膝関節1例、成人手根管1例であった。成人の膝関節、小児腰椎やarthrogryposisの股関節は判読可能な立体像が得られなかった。

【考察】

 骨のCT像は周囲の軟部組織とのcontrastが明瞭であり、立体像は骨格標本をイメージすればよく、求める画像が明確である。これに比べて整形外科領域における皮下の軟部組織は、子宮内胎児等とは異り実際に全体を観察できるものではなく、軟部組織内における各器官の位置関係を各自が想像しているに過ぎない。たとえば乳児の股関節を立体化する場合、関節包を描出すると骨頭や臼蓋は関節包に被われて観察できない。この場合、関節包を透見できるようある割合で半透明化する操作が必要となる。しかし、関節包のみを識別し適度に半透明化することは現在極めて困難である。

 今回、立体感が得られた症例は、通常の超音波画像でaechoic areaがあり、周囲と十分なエコー輝度の差があるものであった。すなわち割面とした場合、aechoic areaから周囲のhigh echoic areaを観察できる症例に限られた。このため、軟骨成分が多い部位や液性成分が貯留する疾患で立体画像が得安い傾向にあると考えられる。

【症例供覧】 各症例の静止画像をクリックすると動画を見ることができます。

症例1.正常小児膝関節.1才6カ月女児、外側長軸走査

 E:epipfysis F:femur T:tibia

症例2.単純性股関節炎、5才男児、前方長軸走査
 A:acetabulum C:capsule F:femur

症例3.先天性股関節脱臼、整復時、開排位での前方長軸走査

  L:lablum H:femoral head N: femoral neck

症例4.ガングリオン、手背部

 G: ganglion

【まとめ】

1.超音波画像の自動立体化システムTomTek Systemを用いて超音波断層像の立体画像化を試みた。

2.軟骨成分が多い部位や液性成分が貯留する疾患で立体画像が得安い傾向にあると考えられる。


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