■通信時における適正な超音波画像の検討


大阪医科大学整形外科/瀬本喜啓,阿部宗昭  YDD/吉川宗孝

■目的
 医学の分野でもインターネットが急速に普及し,画像を通信する機会が増えつつある.検査により得られた画像を遠隔地に送信し,専門医に助言を求めたりホームページ上で画像呈示を行う機会が増えつつある.

 大量の情報が通信されるインターネット上では,できる限り画像の容量を少なくすることが求められる.

 今回,我々は超音波機器のモニター上のグレースケール(白黒)の超音波画像と同程度の画質の画像をインターネットで通信するにあたり,最もファイル容量が少なく,かつ診断を行うために必要な画質を保った最少容量の画像の作成方法につき検討した.

■方法
 デジタルファイル容量を少なくするためには,圧縮と呼ばれる技術が用いられる.圧縮方法には画像が劣化しない可逆圧縮と劣化する不可逆圧縮がある.不可逆圧縮は可逆圧縮と比較して,大幅にファイル容量を少なくできる.今回は画像通信で多く用いられるJoint Photographic Experts Group圧縮画像(以下,JPEG圧縮画像)とCompuServe Graphic Interchange Format形式画像(以下,GIF形式画像)の2種の画像に関して検討した.

 JPEG圧縮は,画像のデータを一部を削除することにより,データ容量を少なくする方法である.圧縮率が高くファイル容量が少なくなる低画質圧縮から,圧縮率が低くファイル容量があまり少なくならない高画質圧縮まで,種々の段階を選ぶことができる.

 白黒画像の階調はbit数で表される.通常モニター画面は8bitすなわち2の8乗である256階調が標準である.この階調を少なくする方法,すなわちbit数を少なくすることにより画像を圧縮する方法の一つがGIF形式である.

 これらの2種の圧縮された画像は,画像表示の可能なホームページ閲覧ソフト(Netscape NavigatorやInternet Explorer)によって閲覧できる.

 通信に際しては,以下のようにモデルケースを想定した.まず,MOディスクに保存した超音波画像をコンピュータに取り込み,e-mailの添付ファイルとして送信する.受信側はこれをメール通信用ソフトウエアかホームページ閲覧ソフトウエアで256色以上の表示能力のあるモニター上に表示する(Fig.1).今回は超音波機器からの出力画像はトリミングやサイズの縮小を行なわず,コントラストや明度の補正も行わなかった.


Fig.1 通信のモデルケース
SSAMOPC─────>
e-mail添付
PC
超音波機器MOディスクコンピュータ通信コンピュータ


 圧縮の方法は,まず3枚の原画をパソコン上の一般的な画像処理ソフトウェアであるAdobe社のPhotoshopに読み込み,種々の圧縮を行い別途保存した.GIF形式画像は8bit(256階調),4bit(16階調),2bit(4階調)の3種類の階調に変換して圧縮保存し,JPEG圧縮画像は,最高画質(低圧縮率),標準画質,低画質(高圧縮率)の3種類で圧縮保存した(Fig.2).


Fig.2 画像の処理方法
MO─────>
データの読込み
PC─────>

加工処理

─────>
GIF形式画像
8bit(256階調)
4bit(16階調)
2bit(4階調)


JPEG圧縮画像
最高画質(低圧縮率)
標準画質
低画質(高圧縮率)
MOディスクコンピュータ
Photoshop
圧縮保存


 使用した超音波機器は東芝社製340Aで,MO画像保存装置はTEAC社製のMU70である.

 今回使用した画像は,Graf法により撮像したtype 1,type 2b,type 3bの3枚の乳児股関節白黒画像である.これらを前述の6通りの方法で圧縮保存し,計18枚の画像につき画質とファイル容量を検討した.

 これらの画像のピクセル数は504×688で,Photoshop上でのグレースケール画像としてのファイル容量は約339Kbyteである.MacintoshではPhotoshopファイルとして通常保存すると,リソースフォークを含んだファイル容量は約217Kbyteとなる.これはPhotoshop自信が可逆圧縮をかけるためである.圧縮なしのBMPファイルに変換保存すると約348Kbyteであった.インターネットで通信する場合,リソースフォークを含んでいてもJPEG圧縮画像・GIF形式画像共にメールソフトがリソースフォークを削除しデータフォークだけのファイルを作り送信するので,ファイル容量は若干少なくなる.


■結果
 画質はtype 1,type 2b,type 3bとも2bitのGIF画像で明らかに劣っていた.他の画像は,モニター上に通常の大きさに表示した場合,区別がつかない程度の差異であった(Table, Fig.3, Fig.4, Fig.5).

*注
下記Tableは画像比較のため6種の圧縮画像が同時に表示できるようになっているファイルにリンクしています.
これらの画像は元画像の絶対ピクセル数をさわらずに,トリミングもリサイズもしていません.(504×688)
したがって容量が非常に大きいので読込みに時間がかかります.
また各々の画像を1点づつ表示できるようにもしてあります.


Table 各圧縮画像の容量(単位 Kbyte)
GIFJPEG
8bit4bit2bit最高画質標準画質低画質
Graf 3b (Fig.3)2436741924327
Graf 2b (Fig.4)20268321044122
Graf 1 (Fig.5)1606423883419


 ファイル容量は,低画質のJPEGファイルが約20〜30Kbyteと最も少なく,JPEGノイズの影響も目立たない.

■考察
 画質は画像の種類,使用するモニタの表示可能色数,画像閲覧ソフトウエアの種類等により影響を受ける.また通信速度は,通信回線の種類と使用状況等によって影響を受けるが,最も大きな要因はファイル容量である.

 e-mailに添付するファイル容量が大きいと通信に時間がかかり,送信者,受信者ともに不便である.印刷時とは異なり,モニター上で画質の劣化が判別できない場合は,できるだけ容量の少ないファイルにして通信することが推奨される.

 今回検討した2bitのGIF画像は8bit画像と比べて約6分の1の容量であったが,画質の劣化は明らかであった.これに比べてJPEG圧縮画像は最高画質でも8bitのGIF形式画像の約半分の容量であった.またJPEG圧縮の低画質画像でも画質の劣化は少なく,今回の3枚の超音波画像の圧縮後の容量は6通りの方法の中で最も少なく30Kbyte以下であった.白黒の超音波画像の通信には低画質のJPEG圧縮画像が最も適していると言える.また画像を必要部分のみトリミングし,画像診断可能な限りサイズの縮小を行なえば,さらにファイル容量を少なくできる.

 整形外科の超音波診断にもカラー画像が増えつつあり,今後はカラーの超音波画像の通信についても検討を行う予定である.

■まとめ
 白黒の超音波画像の通信に用いる画像としては,低画質(高圧縮率)のJPEG圧縮画像が最も適している.