当科における超音波検査

  先天股脱に対する股関節前方走査

 

  岩手県立都南の園整形外科 宍戸 博

  岩手医科大学整形外科   白石秀夫・北川由佳

                   青木 裕・嶋村 正

  盛岡市立病院整形外科   本田 恵

 

   (目的)1992年以降、岩手医科大学整形外科(以下当科と略)では先天股脱児に対し、治療前後に股関節前方走査による超音波検査を行っているので報告する。

   (方法)治療前後に、股関節前方走査による超音波検査を、患児を開排位として行った。

   超音波機種は、アロカSSD650及びSSD680を使用し、プローブは、3.5MHzコンベックスタイプを使用した。

   (結果)脱臼整復前後の超音波検査で、骨頭と周囲との位置関係を把握できた。リーメンビューゲル症例では、整復前の脱臼側の骨頭は臼蓋の後方に存在し、左右非対象であったが、整復後は左右ともほぼ同位置に存在していることを確認できた。徒手整復例では、整復前はリーメンビューゲル症例とほぼ同様であったが、整復後は脱臼していた側の骨頭が健側の骨頭よりもやや遠位にある症例もみられた。

   (考察)鈴木らによって報告された先天股脱に対する股関節前方走査による超音波検査は両股関節を同時に描出することができ、特にリーメンビューゲル装着後や徒手整復後には患児の股関節は開排位で保持されることが多いが、この肢位でも超音波検査が可能である。当科においてはコンベックスタイプのプローブを使用しており、厳密な意味での鈴木らの報告した前方走査とは異なるが、最近は両側脱臼例が著しく減少していることもあり、脱臼未整復児ではまず、健側の骨頭を描出させ、プローブの軸がずれないようにしながら、 プローブを脱臼側に移動し、両側を同一画像に描出するようにつとめている。開排制限の強い児や1才を超える児では両股を同一画像に描出するのは困難である等の欠点もあるが、前方走査による超音波検査は、先天股脱に対し有用な検査法と考えられた。