整復された乳児股関節の多くは屈曲開排位にて保持される事が多い。この肢位にて
整復が得られているか否かの確認は超音波装置だけを用いれば、前方法が最も有用で
はないかと思われ、演者も愛用している。しかし本法を再現性のある検査法にするに
は共通の標準断面が必要であり、この標準断面に相当する画像の描出に努め工夫を惜
しむべきでない。
前方法により描出された正常、または確実に整復された股関節の標準断面には少な
くても以下3ツの解剖学的構造が診られるはずである。(1)恥骨結節P、(2)骨
幹、骨幹端移行部MD、または恥骨大腿靭帯付着部L、(3)寛骨臼後内壁W。そしてこ
の画像の恥骨前縁Pから骨幹、骨幹端移行部MD、或いは恥骨大腿靭帯付着部Lまでの距
離を計測し、健側のと比べる事により定量的にも正確に評価できる。P&MD(また
はP-S)距離の左右差は正常の場合3mm.以内である。
本法の利点;(1)一般の整復位で検査ができる。(2)新生児、乳児に於いても
共に取り易い肢位で、検査が容易である。(3)P&MD(P-L)距離の計測により整復
が良好か否か判断できる。
欠点;(1)計測に用いる解剖学的構造(参照点)の同定が困難な場合がある。
(2)開排制限が強い場合、検査の実施が容易でない。(3)高度脱臼の場合画像の
描出が極めて困難である。
以上、本法の走査手技と利点、欠点等に重点を置いて討議し、標準断面描出のコツ
について述べたい。