超音波診断による股関節の生理的不安定性

昭和大学藤が丘病院整形外科、*昭和大学藤が丘リハビリテーション病院整形外科
山崎 謙 扇谷浩文* 小原 周* 三枝 超 斉藤 進

 

(目的)超音波検査の最大の利点は動態で観察ができることである。股関節の不安定性を評価できる方法は現在までのところ股関節を牽引するときに観察されるmicro bubbleと考える。今回、我々は新生児、乳児股関節の生理的な不安定性につき検討した。
(症例と方法)症例は218例、436関節、男児31例、女児187例であった。週齢は1.6週から43週、平均14週であった。超音波診断はtypeTは324関節、typeUa+25関節、typeUa-20関節、typeUb20関節、typeUcD10関節、typeV、Wは37関節であった。これらの症例に牽引テストを施行し、Δβ角とMBSの有無を調査した。症例を週齢別に分け、そのΔβ角とMBS陽性の割合の変化を検討した。
(結果)Δβ角は週齢3.9週以下では最小で7週以上8.9週以下で大きくなり、その後徐々に小さくなり16週以上で大きくなった。MBS(+)の割合は3.9週以下で最小であり、9週以上10.9週以下で最大となり再び小さくなり16週以降大きくなった。どちらも2峰性にピークが存在していた。
(考察)今回の結果では生後4週まではvacuum fitが強く、その後7週から8週前後でvacuum fitが弱くなると思われる。そしてこの時期に幼弱な股関節は不安定となり、発育に多因子が影響を及ぼし臼蓋の発育を障害すると思われた。