頚椎脊柱管拡大術における脊髄動脈の血流変化

名古屋第二赤十字病院整形外科 佐藤公治、安藤智洋、宮坂和良

名古屋大学整形外科 松山幸弘、辻太一

 

【目的】頚椎症性脊髄症に対する脊柱管拡大術は広く行われている。その際、脊髄の

除圧については術中の超音波診断で確認可能である。しかし脊髄の血流変化について

の報告は皆無である。脊柱管拡大時に脊髄の血流がどのように変化するかを検討した。

【対象】頚髄部の脊柱管狭窄による脊髄症状を呈し、2001年8月から02年3月に両開き

式頚椎椎弓形成術(黒川変法)を施行した30例。男性19例、女性11例、平均年齢61歳で

ある。そのうち椎弓を両開きする以前に前脊髄動脈を測定し得た19例について検討し

た。

【方法】手術は、C3から7の棘突起を基部で切除、椎弓正中溝を掘削後に超音波で脊

髄を矢状方向に観察した。パワードプラ法にて前脊髄動脈を描出、パルスドプラにて

前脊髄動脈のPI(Pulsatility index)、RI(Resistance index)を測定した。その後、

椎弓外側溝を掘削しC3から7の椎弓を両開きとし、同様に観察および測定をした。

【結果】どの症例も脊髄は良好に除圧され前脊髄動脈の描出は良好となった。除圧に

より血流の指標となるPIは1.67から1.34に減少した。またRIは0.60から0.53に減少し

た。

【考察】PI、RIの絶対値は血圧や年齢にも影響を受ける。また血管抵抗の減少が一概

に血流増加とは言えないが、除圧によりPIとRIは減少する傾向にあると言える。

【結論】頚椎脊柱管拡大術直後における脊髄動脈の血流は増加傾向に変化する事が確

認された。