肘部管における尺骨神経の長軸超音波画像

聖マリアンナ医科大学整形外科学教室

中島浩志 別府諸兄 今村恵一郎 奥山涼子

松岡珠理 青木治人

 

肘部管症候群の超音波検査は内側上顆部の短軸像で尺骨神経の腫脹を見て、偽神経腫の有無で診断することが多い。靱帯による神経の圧迫を観察して、より直接的に神経の障害を評価できるか検討した。

超音検査後に手術を施行して神経の状態を確認した18例を対象とした。圧迫による神経の変形について超音波所見が手術所見と一致したのは18例中9例、ほぼ一致が3例、不一致が5例、変形性肘関節症による肘伸展制限で長軸像の撮影不能が1例であった。不一致の5例は超音波で神経の縊れを検出できず、全てfalse negativeであり、超音波検査のsensitivity58%と低かった。False positiveの症例はなく、specificity100%であった。同時に撮影した内側上顆部の短軸像では、ほぼ全例において神経腫脹を正しく評価できた。肘伸展制限があると走査しにくい、尺側手根屈筋の下は神経を描出しにくいことが、長軸像の検査手技上の問題であった。

 短軸像で神経腫脹を評価するのは容易であるが、長軸像で神経が圧迫されている部位を確認することも治療に際して有用である。感度が低くて軽度の圧迫病変は評価できないものの、ある程度は神経の縊れを検出できた。尺側手根屈筋近位縁における尺骨神経の長軸走査を併用することでより多くの情報を得ることができる。