上方関節唇の超音波下動態検査
名鉄病院整形外科
杉本勝正

肩関節において関節唇は重要な関節構成体の一つである。特に上方関節唇は投球障害などのスポーツ障害において損傷されやすく、正確な診断を必要とする。同部の超音波診断について我々は1996年第8回本研究会において報告した。今回、超音波下に肩関節の動態検査を行い、肩関節の動きに伴う上方関節唇の挙動を捉え、関節唇損傷診断に応用することができたので報告する。対象は動態検査を行った野球選手27名27肩関節(17ー36才)である。15名の投球側肩関節に上方関節唇損傷を認めた。前回報告した方法で上方関節唇をモニター上に捉え、ゆっくり肩関節を投球ポジションまで挙上させた後、さらに外旋を加えて上方関節唇がどのような動きを示すか観察した。正常な上方関節唇は肩関節外転、外旋により関節面に平行になるまで(約90°)supraglenoid tubercleを中心に回転し、関節面より近位に移動することは無かった。SLAP Type2症例では上方関節唇が関節面より近位に移動することが観察された。SLAP Type3,4症例では下方ストレスにより、関節唇が関節窩縁から剥離することが観察された。このように超音波下動態検査は上方関節唇損傷診断において有用であることが示唆された。