尺側手根伸筋腱腱鞘炎に対する超音波診断

駿河台日本大学病院整形外科

長岡正宏、松崎浩巳

 尺側手根伸筋腱腱鞘炎は尺側手関節部痛を訴える疾患であるが,TFCC障害などとの鑑別が重要である.今回われわれは本症に対して超音波検査を行ったので,その有用性について検討した.

 症例はこれまでに治療した尺側手根伸筋腱腱鞘炎38例の内,超音波検査を行った78手である.性別は男性1例,女性6例,年齢は26歳から60歳,平均43.4歳であった.全例右利きであったが,罹患側は右側5例,左側はなし,両側2例であった.治療は手術を行ったものが33手で,その他は保存的に治療した. 

 超音波検査はアロカSSD-1200,10MHz探触子を用い,手関節背尺側の短軸像を検討した.その結果,尺側手根伸筋腱は健側と比較して太く描出され,その周囲はhypoechoicな円形層により被われていた.これらの所見は一般的な腱鞘炎と同様のものであった.副腱の存在を疑わせる症例が1例あったが,保存的に治療したため確定診断は得られていない.

 尺側手根伸筋腱腱鞘炎では腱鞘の肥厚や同部の圧痛,回外強制で疼痛が誘発されることなど,いくつかの特徴があるため,診断に難渋することは少ない.しかし,尺側手関節部痛を訴える症例のなかにはTFCC障害との鑑別に困ることもある.腱鞘炎の超音波画像が描出されれば容易に本症と診断ができるため,外来での診療に有用であった.