乳児DDH診断における超音波検査(前方法)の原則、コツ、工夫

 

滋賀県立小児保健医療センター整形外科

鈴木茂夫、瀬戸洋一、二見徹、柏木直也、兼子秀人、添田恒光

 

 

乳児DDH検査の基本は視診・触診である。超音波検査は、視診・触診で得られた所見を確認し重症度を分類する為におこなう。視診・触診をおろそかにしていると、いつのまにか画像が一人歩きをして大きな診断ミスにつながることがある。

(超音波検査の原則)

先天股脱の病理を股関節の構造を動的3次元空間の世界で考える。

(視診・触診の注意)

1. 軟らかい視線でのアイコンタクト。

2. 赤ちゃんの全身を観察する。それだけでおよそのことは診断できる。

3. 次ぎに触診を行う。赤ちゃんには常に優しく触れる。

軟らかい視線、優しい触診によって赤ちゃんが検査に協力してくれる状態をつくり出すと、視診・触診の後にすみやかに超音波検査に移行できる。

(超音波検査のコツ)

1. 検査台の上に音の出るおもちゃ等を置いておくのも良い。スクリーニングテストは赤ちゃんがおもちゃに気をとられている間に終わってしまう。

2. 下肢の運動に合わせて膝を軽く伸展させてやると、赤ちゃんは自分から股関節伸展位をとる。逆に膝を軽く曲げてやれば、赤ちゃんは自然に股関節屈曲位をとる。

3. プローブはゆっくりと動かす。正しい画像が出ない原因のほとんどは、プローブの動かし方が早いことによる。

4. 恥骨が最も鮮明に得られる断層面(標準画面)を早く描出する。標準画面は恥骨の臼蓋形成部の最も前方部、言い換えれば垂直に当てた音波が最も反射する部位を通るが、これは1人につき1つしかない。