『関節の画像診断の現況と超音波検査の役割』

                 岩手医科大学放射線医学講座 江原茂

 

超音波検査技術は長い歴史のある検査法であるが、画像処理技術の進歩に加えて、高周波数トランスデューサーの利用により、整形外科領域の表在性病変の診断に積極的に応用されるようになったのは最近のことである。骨・関節領域での超音波検査の利用は、特にヨーロッパにおいて過去10年以上にわたって多くの経験が蓄積され、それが北米へ移植されるとともに大きく普及しつつある。

本講演では、CTやMRIなど他の検査法の中にあって超音波検査の位置づけと、画像情報の役割についての私見を述べる。

 骨・関節・軟部組織の画像診断には、MRIとCTが大きな役割を果たしてきたが、骨組織の評価自体には問題があるものの骨髄から皮下の軟部組織に至るまで広範なスクリーニングが可能なMRIと、骨皮質とその周囲および石灰化・骨化病変の評価に役立つCTが依然として大きな役割を担っている。超音波検査はその中にあって、装置が一般に他の画像診断機器に比べて安価であること、非侵襲的であることなどの利点があり、皮下から骨皮質周囲までの比較的表在性の病変の評価に優れている。また超音波検査は、CTやMRIに比べて、触診などの理学所見との相関が可能であり、時間分解能の高い点を生かすことができ、ストレス検査も比較的容易に行える特徴がある。

超音波検査とともに、これらCTやMRIなどのコンピュータ断層技術の進歩は、相互に影響しながら、画像所見の解釈をより再現性のある詳細なものに変えつつある。

肩関節の腱板の評価法としての超音波検査は、20年ほどの長期にわたって施行されてきており、一時は再現性が無い点から有用性を否定されたが、新しい検査手法により再現性のある有用な検査となるに至っている。小児股関節はもっとも早期から有用性が認められた関節であり、先天性股関節脱臼や滑膜疾患で大きな役割を果たしている。膝関節では、MRIがもっとも有用なスクリーニング法として確立されており、超音波検査の利用は限定的である。また、肘、手、足関節では、靭帯・腱・関節滑膜など特定の目的に合わせて、超音波検査が威力を発揮できる部位である。