超音波検査を施行した滑膜肉腫の2症例

 

       昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 整形外科
                           永井英、扇谷浩文、小原周、相良光利
 
 

 

滑膜肉腫は好発年齢が15から40歳で、好発部位は四肢の大関節近傍、特に膝付近に多い。悪性軟部腫瘍では三番目に多いとされるものの遭遇する機会は比較的少ない。今回は超音波検査を施行した2症例を経験したので報告する。
 症例1:50歳女性、約15年前、バレーボール中に主訴が出現。某院整形外科受診するも筋肉痛といわれた。平成7年頃、近医受診(内科開業医)超音波施行されるが原因不明とのことであった。平成14年、整形外科受診(開業医)後、原因不明のため107日精査加療目的にて当院紹介受診となった。超音波施行し、長径が7mm大と小さな良性軟部腫瘍の診断にて手術施行した。手術時に大腿筋膜との癒着あり悪性も疑い周囲の筋膜も一緒に切除したが、切除不十分にて再度広範囲切除施行した。
 症例2:44歳女性、5年前に大転子部を打撲した後に同部に痛みがあった。近医にてレントゲンとるも臼蓋形成不全と診断され放置されていた。13年春頃から左大転子部に腫瘍あるとして近医内科クリニックで超音波検査施行、脂肪腫または水腫と診断され13年8月29日当科紹介された。臨床所見と超音波画像から大転子部滑液胞炎による水腫が疑われ、穿刺にて滑液採取、その後もすぐに水がたまり再穿刺に際して細胞診に提出、出血嚢胞所見と滑膜被覆細胞の増生所見を認めるとのことで手術を勧めたが、本人拒否するため経過観察とした。6ヶ月後に再チェックした際に急に大きくなってきたようであり、腫瘍専門医に紹介する。その結果は滑膜肉腫の診断で広範囲切除施行された。
 本疾患は比較的経過が長く、術前診断は困難で単純切除後病理診断にてみつかるケースも少なくない。また針生検での診断は困難とされる。超音波診断が本疾患や血管腫との鑑別の意味でもどのように有効であるかを考えさせられたので問題点をあげ報告する。