肩腱板断裂の超音波検査所見

‐腱板断裂の超音波診断基準作成の一助とするために‐

Ultrasonographic findings of the rotator cuff tears

 

済生会吹田病院 整形外科

黒川正夫 岩田圭生 吉岡 誠 藤井裕之 長澤浩治 吉田隆司

 

【目的】1998年以降の5年間に肩腱板断裂と診断した症例の超音波検査所見を調査し,腱板断裂の超音波診断基準作成の一助とすること.

【対象】対象は1998年以降の5年間に腱板断裂と診断した182肩関節で,年齢は17歳から92歳,平均63歳,性別は男性111肩,女性71肩,右116肩,左66肩であった.断裂の大きさは広範囲断裂24肩,大断裂13肩,中断裂33肩,小断裂56肩,不全断裂56肩であった.

【方法】腱板断裂の確定診断はMRIをおこない,診断の難しい症例には関節造影を追加した.これらに対して肩峰下滑液包の境界エコーの形態変化,腱板内部エコーの変化を調査した.またこれらを腱板断裂の程度で分類しその出現頻度を比較した.

【結果】1.峰下滑液包の境界エコーの形態:平坦型は広範囲断裂24肩全例,大断裂11/13肩(84.6%),中断裂8/33肩(27.3%),小断裂3/56肩(5.4%),不全断裂0であった.凹型は広範囲断裂0,大断裂2/13肩(15.4%),中断裂25/33肩(72.7%)小断裂32/56肩(57.1%),不全断裂4/56肩(7.2%)であった.凸型は広範囲,大,中断裂ともに0,小断裂2/56肩(3.6%),不全断裂5/568.9%)であった.正常型は小断裂19/5634.1%),不全断裂45/56肩(83.9%)であった.2.腱板内部エコー:低エコーを示したものが広範囲断裂20/24肩(83.3%),大断裂13/13肩(100%),中断裂32/33肩(93.9%),小断裂54/56肩(96.4%),不全断裂44/56肩(78.6%)であった.高エコーを示したものは広範囲,大断裂0,中断裂1/33%6.1%),小断裂1/56肩(1.8%),不全断裂5/56肩(8.9%)であった.不均質なエコーを示したものが広範囲断裂4/2416.7%),大断裂0,中断裂1/336.1%),小断裂0,不全断裂3/56肩(5.4%)であった.正常の中エコーを示したものは広範囲,大,中断裂では0,小断裂小断裂1/56肩(1.8%),不全断裂4/56肩(7.1%)であった.

【結論】腱板断裂は主として肩峰下滑液包の形態変化と腱板内部エコーの変化で診断が可能である.