超音波検査下に関節鏡を用いて除去した大腿四頭筋血腫の一例

Hematoma of M. quadriceps femoris removed with arthroscopy under

ultrasonography.

 

山下医院                   山下琢

京都下鴨病院整形外科       山下文治、森田康司、船越登

 

 

(目的)スポーツ選手に生じた大腿四頭筋血腫で、症状が持続する例に対しては手術的治療の適応となる。血腫除去術に際してはできるだけ非侵襲的手術が望ましい。我々は、超音波断層法で血腫の部位を確認しながら鏡視下に血腫を除去する方法を行い、良好な結果を得た。

(症例)19歳、男性、大学サッカー部ディフェンス 身長172cm 体重70kg

平成12111日 サッカー試合中、左大腿前面に相手の膝が入った。直後から膝の屈伸、歩行が不能となった。30分後に腫脹と疼痛が強度となり、救急受診した。

初診時、左大腿の疼痛と腫脹が強度で、膝関節の自動運動は不能であった。超音波検査では大腿前面深部に無エコー領域を認めた。穿刺により8ccの血液を排液した。入院の上、膝40°屈曲位でギプスシーネ固定を行い、アイシング、鎮痛消炎剤投与による治療を行った。受傷後3日目のMRI検査では大腿四頭筋内にT2 high領域とT2,T1 high領域を認め、大腿四頭筋の挫滅と血腫と診断した。膝屈曲は自他動とも40°で、自動伸展は不能であった。

受傷後24日目のMRIで血腫の拡大を認め、超音波検査で大腿前面に約1252cmの無エコー領域を認めた。症状が持続するため、平成12124日、関節鏡を用いた血腫除去術を施行した。手術はまず超音波検査で血腫の位置と大きさを確認し、次に、大腿外側から鈍棒を刺入、先端が血腫内に到達したことを確認し、関節鏡を挿入した。その末梢側からヘルニア鉗子等で凝血塊を摘出した。超音波検査で無エコー領域の消失したことを確認した。

術後7日目、屈曲110°、圧痛は軽度で、歩行も可能となり退院した。術後50日目、血腫は消失し、可動域も正常で、圧痛なく、自動伸展も可能であった。術後3カ月では、大腿四頭筋筋力は健側の約80%、ハムストリングスは90%であった。