四肢異物例に対する術前超音波検査の有用性

Ultrasonographic evaluation of foreign bodies in the extremities

 

  大阪医科大学 整形外科  

長谷川彰彦、渡辺千聡、白井久也、植田直樹、大塚尚、阿部宗昭

 

 

【目的】過去6年間に四肢の異物に対して術前超音波検査を施行し、手術治療を行った症例を調査し検討したので報告する.

【方法】1995年から2000年までに当院にて手術治療を行った7症例を対象とした.内訳は男性4例,女性3例であり,年齢は16歳から75歳(平均36.6歳)であった.手術までの期間,異物の種類および部位,合併損傷の有無について検討した.

【結果】異物迷入から手術までの期間は11日から570日(平均173日)であった.異物の存在部位は手指4例,手関節1例,前腕部1例,足底部1例であった.異物の種類はガラス片が2例,金属片2例,魚の骨1例,ウニのとげ1例,不明が1例であった。3例に神経損傷を合併しており,内訳は,指神経損傷、正中神経損傷、足底神経損傷各1例であった.術前のX線検査では,全例に異物の確認が可能であったが、補助診断として超音波検査を追加した.化膿性炎症を合併していた症例は2例あったが,異物摘出と可及的な掻爬にて術後再燃した例はなかった.

【考察】異物症例では当初より患者自身が異物の存在を自覚することが多いが、異物の存在を自覚せぬまま経過し、遷延する腫脹や疼痛によってはじめて異物の存在を疑う場合もある。異物の種類や大きさによりX線検査だけでは十分に描出されない例があり、そのような場合には診断に難渋することがある。今回の症例ではX線検査で全例異物の確認は可能であったが、異物が小さい例に対してartifactとの鑑別を要するために超音波検査を追加した。超音波検査は動態観察が可能であり,異物の局在部位や周囲組織との関係を知り、手術を最低侵襲で行うための補助診断として有用であった。