脊椎後方短縮術における術中超音波診断

Intraoperative ultrasonography in posterior shortening surgery

 

東松山市立市民病院整形外科           西村太一、星野雅洋

駿河台日本大学病院整形外科           松崎浩巳、長岡正宏

日本大学医学部整形外科               徳橋泰明

 

 

【目的】近年、超音波診断学の進歩と、機器の性能の向上によって手術中に脊髄の内部やその周囲の状態を観察することが簡単にできるようになった。われわれは、脊椎後方短縮術の術中に超音波を利用しており今回、その有用性について報告する。

【対象と方法】対象は脊椎後方短縮術を行った19例で、平均年齢は73.5歳、骨折高位は胸腰椎移行部が中心である。東芝製超音波診断装置SSA-550A、7.5MHzのリニアプローブを用い、術野に生理食塩水を充満させる水侵法で長軸像と短軸像の画像を得た。圧潰高位椎弓と頭側椎弓の一部を切除し、骨折椎体レベルの確認目的にエコーを用いる。除圧し、短縮を行った後、もう一度エコーにて椎体後壁の骨片の残存、硬膜の圧迫の有無について観察した。

【結果】椎弓切除部より脊髄、馬尾を観察できた。硬膜と脊髄の表面はhyperechoic、くも膜下腔はecho free space、脊髄内はhypoechoic、後縦靭帯と椎体表面、椎間板はhyperechoicで椎体内はacousticで黒くなる。馬尾レベルでは馬尾はhyperechoicな紐状に観察される。除圧前に圧潰した骨折部での椎体後壁の膨隆が観察され、骨切りすべき椎体のレベル確認と硬膜の圧迫の程度が判定できる。椎体後壁の骨片を切除または前方に押し込むことで硬膜前方を除圧し、再びエコーを用いて確認する。硬膜の圧迫が残っている場合、エコー下に骨片の切除が可能である。

【考察】エコーは空気や骨組織が障害となるため、術中に画像を得るにはある程度の超音波が往復できる無骨部分が必要となる。脊椎後方短縮術では圧潰高位椎弓と頭側椎弓の一部を切除するため必要十分な画像を得ることできた。術中エコーは簡便で安全にかつリアルタイムに脊髄内外を観察できる優れた検査法であり、脊椎後方短縮術においても有用で不可欠なものであると考えられる。