1.アキレス腱損傷後の修復過程における低出力超音波の影響
Effect of low-output ultrasound on the repair process after
Achilles tendon injuries

東京医科大学 整形外科学教室
   ○朝日盛也、山本謙吾、正岡利紀、反町武史、今給黎篤弘
S.asahi,K.yamamoto,T.masaoka,T.sorimachi,A.imakiire
Dept. of Orthop Surg., Tkyo Medical University


【目的】アキレス腱断裂や靭帯損傷などの軟部組織損傷に対して保存的治療を施行する場合、早期にかつ十分な強度を獲得する方法を選択することが重要である。今回我々は、骨折の治療促進に対して、その有効性が国内外で報告されている低出力超音波の軟部組織修復への応用を試み、ラットのアキレス腱損傷モデルに低出力超音波を照射し形態学的、組織学的、力学的にその有効性を検討した。
【方法】週齢12〜14週、雄のSDラット68匹136肢を用いた。ネンブタ−ル腹腔麻酔下、両側アキレス腱を付着部より約1cmの部位にて直視下で切離し7‐0ナイロンにて縫合後大腿以下尖足位でシ−ネ固定した。術直後より片側に低出力超音波(周波数1.5MHz、繰返し周期1.0kHz、バ−スト幅200μsec、照射出力30mW/cm2)を1日20分間2日〜14日間照射(US群)、対側にはプロ−ブのみをあてたControl群とした。低出力超音波照射後2日、5日、10日、14日後屠殺し、アキレス腱損傷部より中枢、末梢それぞれ1cmより切離採取した。評価は、HE染色にての組織学的評価、免疫染色にて2日、5日、10日、14日と経時的増殖因子の面積率を観察した。また力学的評価は、引っ張り試験にて10日、14日の破断強度を測定し比較した。
【結果】HE染色では5日後でControl群に比しUS群では細胞密度が高くなり、10日後ではUS群に血管新生が著名にみられた。
免疫染色においてFGFの陽性細胞面積率では、照射5日ではUS群0.694%、Control群1.556%、危険率0.0004、照射10日ではUS群2.576%、Control群4.884%、危険率0.0042と有意差を認めるが、照射14日ではUS群1.246%、Control群1.312%と減少し危険率0.8156と有意差は認めなかった。引っ張り試験での破断強度(図12)は、照射10日ではControl群0.1611MPa、US群0.298MPa、危険率0.0027と有意にUS群の強度が強かった。照射14日ではControl群0.3742MPa、US群0.3953MPaと照射10日に比し両群とも強度は強くなったが、危険率0.6200と両群間に有意差は認めなかった。
【考察】今回の実験結果より腱損傷部に低出力超音波を照射することにより損傷修復部における増殖因子の放出が増加され、修復早期において強度も増すことより低出力超音波の腱損傷部への照射は、臨床応用可能な治療法になりうると考えられた。