11.人工股関節置換術後における股関節内血腫の超音波像
sonographic imaging of intracapusular hematoma after total hip arthroplasty

岡崎市民病院整形外科 鳥居行雄
名古屋大学医学部整形外科 長谷川幸治
ルンド大学整形外科 Hans Wingstrand
Department of Orthopaedic Surgery, Okazaki city hospital Yukio Torii
Department of Orthopaedic Surgery, Nagoya University School of Medicine Yukiharu Hasegawa
Department of Orthopaedic Surgery, Lund University Hans Wingstrand

【目的】人工股関節置換術(以下THA)後における股関節超音波像の特徴とTHA後の股関節内血腫の同定方法について検討すること。
【対象と方法】スウェーデンルンド大学において変形性股関節症に対しprimary THAを施行し、術後の超音波検査に同意が得られた17例17股を対象とした。男性7例、女性10例で、手術時平均年齢は61才であった。Implantと模擬骨を用いたTHAモデルを超音波を用いて観察することにより、implant挿入下における股関節の超音波像の特徴を明らかにした。これをもとに対象患者に対し術後2日目に超音波検査を行った。股関節伸展位で前方からprobeをあて、THA後の股関節内血腫の同定を試みた。
【結果】THAモデルにおいてinner head、neckおよび大腿骨頸部骨皮質が明瞭なhyperechoicな像として観察された。とりわけ画像の中心に位置するneck部は直線状の強いシグナルとして描出され、THA後の股関節を同定する最も良いメルクマールとなっていた。対象患者の超音波検査では股関節内血腫の計測に必要なneckと関節包が同定可能であったが、股関節の肢位やstemの前捻が画像に大きく影響していた。
【考察】THA後の股関節は特有の超音波像を呈するため、関節内血腫の同定には超音波画像に見られる所見がimplantとどのように相関しているかを把握する必要がある。今回のTHAモデルを用いた実験においてimplantのinner head、neckおよび大腿骨頸部骨皮質が明瞭に描出されていたが、とりわけneck部が前方の関節腔の計測の基準点として適切であることがわかった。それ故THA後の関節内血腫の同定には、股関節の肢位やstemの前捻を考慮に入れながらneck部を描出する手技に習熟する必要があると考えられた。