14.A2プーリー部ばね指に対する超音波診断
Ultrasonography for the snapping finger at the A2 plley.

駿河台日本大学病院整形外科
Department of Orthopaedic Surgery,Surugadai Nihon university hospital

山口太平、長岡正宏、長尾聡哉、佐藤多賀子、松崎浩巳
Taihei YAMAGUCHI,Masahiro NAGAOKA,Souya NAGAO,Takako SATOU,Hiromi MATUZAKI

母指以外のばね指では基節部に弾撥現象を生じる症例がまれにある。今回、我々はA2プーリー部のばね指に対し超音波診断を行ったので報告する。
【症例1】43歳男性。主訴:左示指痛。現病歴:平成15年2月ごろより左示指痛が出現し近医を受診し、4月16日当院を紹介された。現症:左示指に疼痛と腫脹があった。A2プーリー部とA1プーリー部に弾撥現象を認めた。左示指の可動域はMP関節20〜80度、PIP関節0〜102度、DIP関節0〜72度であった。超音波検査では示指を屈曲させるとA2プーリーに肥大した腱が引き込まれる様子が描出された。5月8日手術を施行した。A2プーリーの遠位に滑膜の増生を認めたためこれを切除すると、FDPが肥大しA2プーリーに入る時に弾撥現象が出現することを確認した。A2プーリーの遠位でreduction tenoplastyを行い、予防的にA2プーリーの末梢一部を切離した。弾撥現象は消失した。
【症例2】56歳男性。主訴:左中指痛。現病歴:平成15年5月頃より左中指痛があり近医で保存的に治療していた。8月20日軽快しないため当院を紹介された。現症:左中指に疼痛、腫脹を認める。A2の遠位部とA1部に弾撥現象を認めた。左中指の可動域はMP関節0〜44度、PIP関節0〜56度、DIP関節4〜50度であった。超音波検査ではA2プーリーの遠位部で屈筋腱が腫大し,FDPは掌側に偏位している所見であった。8月28日手術を施行した。A2プーリーの遠位で滑膜が著しく増生していたのでこれを切除した。FDSの両側slipが腫大していたためreduction tenoplasyを行ったが、弾撥現症が十分に改善しなかった。A2プーリーを遠位側約5@切離すると弾撥現症が消失した。術後6ヶ月の現在、疼痛はなく、弾撥現象もない。可動域はMP関節0〜74度、PIP関節6〜92度、DIP関節6〜74度である。