最新の超音波技術による四肢表在疾患の診断−血管病変を中心に−

奈良県立医科大学付属病院 中央内視鏡・超音波部
平井都始子

 近年、超音波診断装置はコンピュータ技術の進歩に相俟って著しく進歩してきた。特に、四肢表在疾患の診断においては、10〜15MHzの高周波プローブに加えてTissue Harmonic Imaging(THI)やcompound scanの使用により、ノイズの少ないコントラストのよい鮮明な画質のBモード像が得られるようになった。また、カラードプラ、パワードプラ法の精度向上やB-flowの開発により感度・空間分解能が高くリアルタイム性に優れた血流表示が可能となった。さらに三次元表示法やパノラマ画像表示は、病変の広がりや周囲臓器との立体的な位置関係をより客観的に表示することを可能にした。これらの技術と表在血管性病変や各種疾患の超音波診断について代表症例を提示しながら概説する。
 超音波検査の適応となる末梢血管性病変は、閉塞性動脈硬化症、動脈瘤、動静脈シャント、動静脈奇形、深部静脈血栓症、静脈瘤、リンパ浮腫などである。われわれの施設では、下肢の冷感、疼痛、腫脹、色調の変化、間欠跛行など血管性病変を疑う症例にはまず超音波検査を施行している。血管壁の石灰化が強く血管内腔の評価が困難な症例を除けば、50%以上の動脈狭窄は、血流波形とカラードプラ法による観察によりほぼ全例で同定可能である。動脈瘤や動静脈シャントについては、超音波検査が最も簡便に詳細な情報をもたらしてくれる。血管造影などの合併症としてみられる仮性動脈瘤では超音波プローブで直接圧迫することにより血栓化し、治療することも可能である。最近話題となっている深部静脈血栓症は、特に整形外科領域(股関節、膝関節)の術後に見られることが多い疾患であるが、下腿筋肉枝の血栓症ではDダイマー高値のために施行した超音波検査で初めて診断されることも多い。この部位の静脈血栓症は他の検査法では検出が困難であり、肺動脈塞栓症の原因としても注目されているため、超音波検査が非常に重要かつ有効である。また、四肢腫脹の精査を目的とした超音波検査により、炎症性腫瘤や良性腫瘤性病変、悪性病変などさまざまな血管性病変以外の病変が偶然発見できることもある。これらについても症例を呈示する予定である。