3, 術中超音波断層法により嵌頓と整復の状態が確認できた脊髄ヘルニアの1例
大阪医科大学 外科学講座 整形外科学教室
藤原 憲太 金 明博 富田 誠司
納田 真也 河原 邦彦 藤田 恭史
馬場 一郎 木下 光雄
症例:58歳女性、主訴は左下肢の感覚障害と右下肢筋力低下。術前画像診断としてMRI矢状断像、脊髄造影後CT水平断像においてT5-6レベルで脊髄の腹側への偏位を認め、脊髄ヘルニアを疑い手術を施行した。
T5-6椎弓切除後、硬膜外からの水浸法による超音波長軸および短軸走査を行った。脊髄の腹側への偏位が明瞭に描出され、脊髄ヘルニアの形態(位置と範囲)を正確に把握し得た。
硬膜と右側の腹側クモ膜を切開すると、脊髄は腹側に嵌頓していた。脊髄を愛護的に左方へよけるとヘルニア脱出孔が確認できた。ヘルニア脱出孔を頭尾側へ拡大し脊髄ヘルニアを整復した。
整復後の長軸走査にて脊髄の腹側縁の不整像は消失していた。また整復前にはなかった脊髄陰影の拍動を認めた。
術前MRIやCTは病変部の高位確認には役立ったが、術前確定診断に至る所見は得られなかった。脊髄ヘルニアの術中に超音波断層法を用い、これを補足する情報が得られた。