主題 深部静脈血栓症の超音波診断
大腿骨近位部骨折術後の深部静脈血栓症の検討
―下肢静脈エコーと上行性静脈造影との比較―
岡山済生会病院 整形外科
寺尾 元延
今回われわれは手術を施行した大腿骨近位部骨折患者に対してほぼ同時に上行性下肢静脈造影と血管超音波検査をおこない深部静脈血栓症の発症率を調査し,超音波検査の診断能を評価,検討したので報告する.
対象は2002年3月から2003年12月までに手術を施行した大腿骨近位部骨折75例である.術前,術後D-dimer TAT FDPなどの推移を調査し,術後7日目に上行性静脈造影と超音波検査をほぼ同時に施行した.
結果は静脈造影で75例中DVTが認められたのは46例,61.3%であった.DVT陽性群とDVT陰性群で比較すると,統計学的有意差はなかったがDVT陽性群で手術時間,待期時間が長い傾向にあった.術後7日目のD-dimer値を10μg/mlでcut
off lineとすると静脈造影の結果でSensitivity 95.5%,Specificity 91.4%であった.DVTでのエコーによる診断率はSensitivity
78.3%,Specificity 96.5%であり,膝窩部より近位部において正診率は94.4%で,遠位部では72.6%であった.