主題 上肢の超音波診断

 

 

Bennett病変の超音波像

 

名鉄病院 整形外科

          杉本 勝正  堀田 功一  山嵜 斉子  服部 一希

 

 

【目的】1941年Bennettは投球動作のストレスにより関節窩後下方に骨棘が生じることを報告し、その成因として関節包や三頭筋長頭の牽引力が関与しているとした。2004年我々は解剖学的に関節窩後下方部を検索し、Bennett骨棘部には関節包は付着しておらず、三頭筋長頭の後方線維のみが存在し、骨棘の成因には関節包よりも三頭筋長頭がより関与していると報告した。本研究の目的はわれわれの行った解剖学的研究をもとに、Bennett骨棘の超音波検査を行い同部の病態を明らかにすることにある。

【対象および方法】対象はX線上、Bennett骨棘を有する野球選手10名(全員男性、平均年齢23.8歳)20肩関節である。対象の肩関節の後方を長軸と短軸で検索し、Bennett骨棘の長軸と短軸像を得た。骨棘の解剖学的な位置関係と周囲組織の形態的変化を非投球側と比較検討した。

【結果】非投球側において三頭筋長頭の後方線維は関節窩の8時近くまで付着していた。

Bennett骨棘は関節窩の8時周辺に存在していた。骨棘の直上に存在する小円筋

は超音波上低エコー領域が存在し、局所の浮腫や炎症の存在を示唆していた。

【考察】超音波像においてもBennett骨棘の存在部位には三頭筋長頭の後方線維が存在しており、その成因として重要な要素であると考えられた。また直上部の小円筋にはその影響で炎症性変化が生じやすく、投球障害を惹起する一因と成り得ると思われた。